Orca入門 — Claude Code・Codexを並列実行するAIコーディングエージェント徹底ガイド
Orca AIコーディングエージェントは、Claude Code や Codex など複数の CLI コーディングエージェントを git worktree で並列実行できる、Stably AI 製のオープンソース Agent Development Environment(ADE)です。1つのタスクを複数エージェントに同時に振って結果を比較したり、チームで並列開発を進めたりする際の司令塔として使えます。本記事ではインストール手順から CLI 操作、Conductor や手動の git worktree 運用との比較検証、実務での活用パターンまで解説します。
Orca AIコーディングエージェントとは
Orca は「Run Codex, ClaudeCode, OpenCode or Pi side-by-side — each in its own worktree, tracked in one place」をコンセプトに、Claude Code・Codex・Cursor・GitHub Copilot・Gemini・Grok・Goose・Cline・Continue・Kilocode・Qwen Code など 30 以上の CLI エージェント(および任意のカスタム CLI)をあらかじめ設定済みで扱えるツールです。
主な特徴は次の通りです。
- MIT ライセンスで無料。ただし各エージェントの利用には Claude Pro/Max や ChatGPT Plus/Pro などの自分のサブスクリプションが必要(BYO subscription モデル)
- git worktree による分離で、エージェントごとに独立したブランチ・ターミナル・組み込み Chromium タブ・Monaco エディタを持つ
- デスクトップ(macOS / Windows / Linux)・モバイル(iOS / Android)・ヘッドレスサーバーの3系統で動作
- GitHub / Linear と連携し、Issue から worktree を作成しレビューまで一元管理できる
「調べてみた」ではなく、実際にチームで複数エージェントを並走させる運用を想定して要点を整理します。
インストール手順
デスクトップ版(macOS / Windows / Linux)
Homebrew を使う場合はワンコマンドでインストールできます。
brew install --cask stablyai/orca/orca
Homebrew を使わない場合は onOrca.dev/download からインストーラーを取得します。初回起動時に GitHub 連携と、使用したいエージェント(Claude Code・Codex など)の CLI をローカルに認証済みの状態にしておくとスムーズです。
ヘッドレスLinuxサーバー版(チームで共有する場合)
チームでビルドサーバーを常時稼働させ、モバイルアプリやリモートクライアントから接続する構成も可能です。まず依存パッケージをインストールします。
sudo apt-get update
sudo apt-get install -y \
curl file jq xvfb zlib1g-dev ca-certificates git \
libgtk-3-0t64 libnss3 libatk1.0-0t64 libatk-bridge2.0-0t64 libgbm1 libasound2t64 \
libxtst6 libcups2t64 libdrm2 libxkbcommon0 libpango-1.0-0 libcairo2 libatspi2.0-0t64 \
libxcomposite1 libxdamage1 libxfixes3 libxrandr2 libxrender1 libx11-xcb1 \
libxcb-dri3-0 libxss1
Ubuntu 20.04/22.04 や Debian 12 では t64 サフィックス付きパッケージ名から t64 を外してください。続いて AppImage を取得し、serve サブコマンドでヘッドレス起動します。
sudo mkdir -p /opt/orca
sudo curl -L https://github.com/stablyai/orca/releases/latest/download/orca-linux.AppImage \
-o /opt/orca/orca-linux.AppImage
sudo chmod +x /opt/orca/orca-linux.AppImage
LIBGL_ALWAYS_SOFTWARE=1 /opt/orca/orca-linux.AppImage serve \
--port 6768 \
--pairing-address 100.64.1.20
常時稼働させるなら systemd サービス化しておくと運用が楽になります。
# /etc/systemd/system/orca-serve.service
[Unit]
Description=Orca runtime server
After=network-online.target
Wants=network-online.target
[Service]
Type=simple
User=orca
WorkingDirectory=/home/orca
Environment=LIBGL_ALWAYS_SOFTWARE=1
ExecStart=/opt/orca/orca-linux.AppImage serve --port 6768 --pairing-address 100.64.1.20
Restart=on-failure
RestartSec=5
[Install]
WantedBy=multi-user.target
sudo systemctl daemon-reload
sudo systemctl enable --now orca-serve.service
sudo journalctl -u orca-serve.service -f
複数エージェントを並列実行するとビルド・テストが同時に走るため、CPU コア数とメモリに余裕のあるマシンで動かすのがおすすめです。
git worktreeによる並列分離の仕組み
Orca の中核は git worktree です。1つの worktree は「リポジトリの ID とパスの組」で識別され(<repoId>::<worktreePath> 形式)、エージェントごとに独立したブランチをベース参照から切り出します。
# 現在のベースブランチを確認・変更
orca repo set-base-ref --repo id:<repoId> --ref origin/main --json
# worktree の一覧を確認
orca worktree list --repo id:<repoId> --json
手動で git worktree add を運用する場合(Git CLI Tips で紹介した方法)との最大の違いは、Orca が worktree の作成・ターミナル・組み込みブラウザ・エディタの状態をライフサイクルごと一元管理してくれる点です。エージェント A がブランチ feature/orca-a を、エージェント B が feature/orca-b を同時に触っても、ファイルシステムレベルで完全に分離されているため互いの作業を上書きする心配がありません。
CLIで複数エージェントにタスクを振る — 基本的な使い方
worktree の作成とエージェントの起動は orca worktree create でまとめて行えます。
# Codex に単体でタスクを振る
orca worktree create --name fix-login-bug --agent codex \
--prompt "ログインフォームのバリデーションバグを修正して" --json
# Claude Code にセットアップコマンド付きで振る
orca worktree create --name add-tests --agent claude --setup run --json
同じプロンプトを複数エージェントに同時投入し、結果を比較してから採用するワークフローも実務でよく使います。
for agent in codex claude opencode; do
orca worktree create --name "refactor-auth-${agent}" \
--no-parent --agent "${agent}" \
--prompt "認証まわりのモジュールをリファクタリングして。テストも追加すること" \
--json
done
進行状況はターミナル API で確認できます。
# 実行中の worktree 一覧
orca worktree ps --json
# ターミナル出力を読む
orca terminal read --terminal <handle> --cursor <cursor> --limit 1000 --json
# エージェントの入力待ち(TUI アイドル)を待機
orca terminal wait --terminal <handle> --for tui-idle --timeout-ms 300000 --json
3つのブランチが同時に生成されるので、後述するレビュー画面で diff を見比べて最も良い実装を採用し、残りの worktree は orca worktree rm で削除します。
orca worktree rm --worktree id:<repoId>::<worktreePath> --force --json
GitHub / Linear連携とレビュー・マージフロー
Orca は GitHub と Linear にネイティブ接続でき、Issue から直接 worktree を作成できます。レビュー画面では AI が diff にインラインコメントを付ける「diff annotation」機能があり、指摘事項をそのままエージェントに差し戻して修正させることも可能です。
# レビュー中のステータスに変更
orca worktree set --worktree active --workspace-status in-review --json
# コメントを残す
orca worktree set --worktree active --comment "型エラーが残っているので修正依頼" --json
レビューが完了したら、Orca の UI(または連携先の GitHub)から通常どおり PR を作成してマージします。マージ後は不要になった worktree を削除してディスク容量を回収しておきましょう。
比較検証: Orca vs Conductor vs 手動git worktree運用
並列エージェント実行という同じ課題に対する主要な選択肢を比較します。
| 項目 | Orca | Conductor | 手動 git worktree |
|---|---|---|---|
| 対応エージェント数 | 30以上(プリセット)+任意のCLI | 4つ(Claude Code / Codex / Cursor / OpenCode) | 制限なし(自分でターミナルを開く) |
| プラットフォーム | macOS / Windows / Linux / iOS / Android / ヘッドレスサーバー | macOSネイティブアプリのみ | OSに依存しない |
| 料金 | MIT ライセンスで無料(エージェントは各自のサブスク) | 無料枠あり、クラウド・チーム機能は有料 | 無料(自作スクリプト分の工数はかかる) |
| リモート実行 | SSH worktree・ヘッドレスサーバーに対応 | クラウド実行は有料ティア | 自前でSSH運用を構築する必要あり |
| GitHub / Linear連携 | ネイティブ対応 | GitHub連携あり | なし(別途 gh CLI 等が必要) |
結論としては、複数OS・モバイル・ヘッドレスサーバーをまたいでチームで使うなら Orca、macOSだけで完結し少数エージェントに絞るなら Conductor、依存を増やしたくない・小規模ならスクリプト化した手動 git worktree という使い分けになります。特に Orca は対応エージェント数とヘッドレスサーバー対応の広さが際立っており、CI 環境や共有ビルドマシンに常駐させて複数人からリモート接続する運用と相性が良いです。
実務での活用パターンと注意点
チームリーダーとして実際に運用する際に意識しているポイントをまとめます。
- タスクの性質でエージェントを使い分ける: リファクタリングは Codex、ドキュメント生成やテスト追加は Claude Code、といった形で得意分野ごとに割り振ると比較検証のコストが下がります
- 並列数はマシンリソースと相談する: ビルド・テストが同時に走るため、3〜4並列を超えるとローカルマシンでは息切れしやすく、ヘッドレスサーバーへの移行を検討する目安になります
- コストは人数分×エージェント分かかる: Orca 自体は無料でも Claude Pro/Max や ChatGPT Plus/Pro のサブスクリプションは個別に必要になるため、チーム導入前にライセンス費用を試算しておく
- マージ前のレビューを省略しない: 複数エージェントが自動生成したコードを並列にマージフローへ流し込む構成になるため、Claude Code Security Review のような自動レビューと組み合わせて脆弱性の見落としを減らす運用が安心です
- ヘッドレスサーバーは専用ユーザーで実行する:
useradd --systemで作成した専用ユーザーの権限でorca-serve.serviceを動かし、ホスト全体への影響範囲を絞る
自分自身もセキュリティ分野はまだ勉強中の身ですが、AIエージェントを並列で走らせる構成ではレビュー体制を厚くするほど安心感が増すと感じています。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| Orcaとは | Claude Code・Codexなど30以上のCLIエージェントをgit worktreeで並列実行するオープンソースADE |
| インストール | Homebrewまたはインストーラーでデスクトップ導入。チーム利用時はAppImage+systemdでヘッドレスサーバー化 |
| 並列分離の仕組み | <repoId>::<worktreePath> 単位でエージェントごとに独立したブランチ・ターミナル・ブラウザを保持 |
| 基本的な使い方 | orca worktree create --agent <name> --prompt "..." で同一プロンプトを複数エージェントにファンアウトし結果を比較 |
| 連携機能 | GitHub / Linear とネイティブ連携し、diff annotationでレビュー→修正差し戻し→マージまで一元管理 |
| 比較検証 | 対応エージェント数とクロスプラットフォーム対応でOrcaが優位、macOS特化ならConductorも選択肢 |
| 実務Tips | エージェントの得意分野で使い分け、マシンリソースと並列数のバランスを取り、マージ前レビューを徹底する |